義経・正成はなぜ不死の英雄なのか?
武士の美学・天皇の神性はこうして形成された!
武士の美学・天皇の神性はこうして形成された!
なぜ源頼朝は軍事蜂起に成功したのか。なぜ源義経と楠木正成は日本人にとって不滅の英雄なのか。平家の栄華と滅亡、血塗られた源氏の内部抗争、北条一族の盛衰、南北朝の奇妙な戦い、天皇家と勃興する武士階級の確執──。平清盛、八幡太郎義家、頼朝、義経、木曾義仲、北条政子、北条時宗、楠木正成、新田義貞、足利尊氏、足利義満等々、日本史上稀にみる英雄割拠の時代の意味を「武士の美学と天皇の神性」の関係から現代に蘇らせる。
著者プロフィール
渡部昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英語学者。文明批評家。1930年、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr. phil.,Dr.phil.h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に『英文法史』などの専門書のほか、『文科の時代』『知的生活の方法』『日本史から見た日本人』『税高くして国亡ぶ』『指導力の差』『「東京裁判」を裁判する』『日本は「侵略国家」ではない!』『「パル判決書」の真実』『知的生活の方法・音楽篇』(渡部玄一・共著)などの話題作やベストセラー多数がある。
目次
第1章 武家の台頭──平家の栄華- 「魚は頭から腐る」
- 「息子」が「叔父」という異様な関係
- 「保元の乱」における武家の活躍
- 怨霊となった崇徳天皇
- 異例の出世をとげた平清盛
- 河内源氏の基礎を築いた「前九年の役」
- 関東の豪族を感激させた源頼義・義家父子
- 源三位頼政の鵺退治
- 源氏の決起を促した「以仁王の令旨」
- 源氏の正統とされた三男
- 義朝と義平・朝長兄弟の最期
- そして源氏の正統が生き延びた
- 夢を買った北条政子
- 神のご加護か、強運か
- 敗軍の将・頼朝の威厳
- 平家の夢の醒めはじめ
- 「平家の都落ち」
- 京都解放軍・木曾義仲の蹉跌
- 源義経と平家滅亡
- 義経、奥州に死す
- 義経伝説
- 縁者を皆殺し
- 怨霊にたたられた頼朝
- 源氏の滅亡には美学がない
- 特異なフィギュアヘッド現象
- 位の低いキングメーカー
- 二重法制国家の誕生
- 有能な執権を輩出した北条氏
- 「尼将軍」による新しい女性像
- 政子と静御前の「女の道」
- 三度目の「国体変化」
- 末法思想と蒙古襲来
- 少弐景資の一矢
- 時宗の功績と朝廷の「神風」信仰
- 戦後処理に対する武士の不満
- 苦しまぎれの徳政令
- いくらでもあった徳性の抜け道
- 日本の皇位争いの特徴
- 後嵯峨天皇の私情
- 後深草上皇と亀山上皇の確執
- 皇位継承を交替制に
- 宋学に傾倒した後醍醐天皇
- 天皇の夢に現れた「楠」
- 「天が下には隠れ家もなし」
- 千早城が天下の大勢を一変させた
- 二十日間足らずで滅んだ鎌倉幕府
- 楠木正成の「聖戦思想」
- 天子自ら「武」を握る
- 「武家なき世」こそ天皇の思想
- 足利尊氏が「勲功第一」の理由
- 非業の最期をとげた護良親王
- 「錦の御旗」の軍事的価値
- 拒否された楠木正成の作戦
- 桜井の別れ
- 「楠木正成型」と「赤松円心型」
- 福沢諭吉の「楠木正成権助論」
- 根強く残る「七生報国」
- 「天皇など木像で十分だ」
- 尊氏兄弟それぞれが南朝に降伏した不思議
- 新世代・楠木正儀の行動原理
- 北畠親房が「南朝」をつくった
- 『神皇正統記』の影響力
- 残るは楠木正勝のみ
- 消えた後亀山天皇の系図
- 義満の宗教センス
- 公家との違いが曖昧な義満型幕府
- 義満の〝実力行使〟
- 平清盛と足利義満
- 自分の妻を「国母」に
- 義満急死は〝天佑神助〟
- 武家の「節度」を回復させた義持