愛は買うことはできない
「愛」という言葉の意味は広大で、日々大勢の人々に何の疑いもなく手軽に使われていながら、これほど本質を掴みにくいものはない。著者が考える愛の定義は、「その人のために死ねるか、どうか」。愛している男、女、子供のために死ねるか。それは一つの踏み絵だ。しかし、そう思える相手は、ごく少ない。その人たちを愛していないのかと思うと絶望的になるが、人間の不思議さとは、愛していない人をも愛する方法があるということなのだ。曽野綾子著作集の第一弾。
著者プロフィール
曽野 綾子(その・あやこ)
作家。1931年、東京生まれ。聖心女子大学文学部英文科卒業。
ローマ法王庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章。日本芸術院賞・恩賜賞受賞。著書に『無名碑』(講談社)『神の汚れた手』(文藝春秋)、『貧困の僻地』『人間の基本』『人間関係』(以上、新潮社)、『老いの才覚』(ベストセラーズ)、『人生の収穫』(河出書房新社)、『人間にとって成熟とは何か』(幻冬舎)、『夫婦、この不思議な関係』『沖縄戦・渡嘉敷島「集団自決」の真実』『悪と不純の楽しさ』『私の中の聖書』『都会の幸福』『弱者が強者を駆逐する時代』『図解 いま聖書を学ぶ』『この世に恋して』『想定外の老年』(以上、ワック)など多数。
目次
はじめに──その人のために死ねるか── 第1章 愛は何を欲求するか- ① どんな人を愛するか
- ・ 女が、好きになる男
- ・ 本当の愛
- ・ この相手はどんな人だろうか
- ・ 私はなぜ彼と結婚する気になったか
- ・ 「……でなければ」という条件
- ② 女が本気で思ってみること
- ・ 肉体の表現、精神の表現
- ・ 表現の根源
- ・ 悔やむことのない性
- ・ 女がひそかに考えること
- ③ 彼女に発見がなくなるとき
- ・ 持ち味の使いかた
- ・ 愛される気分と心情
- ・ 男が求めつづける女の素顔
- ・ 何かに向き合っている女の姿
- ・ 一刻も早く捨てねばならない愛
- ・ すべてのものに時期がある
- ① 思いとどまるべき結婚
- ・ 本当に愛している証拠は何か
- ・ それでも結婚すべきか
- ・ 愛していく才覚
- ・ 本当の出発はどこにあるか
- ② ステキな夫婦になってはいけない
- ・ 夫は何も言わないが
- ・ “ある点……”の間
- ・ 二人の統治者がいては困る
- ・ ついた噓は重荷である
- ・ どこを愛しているのか
- ・ 考えねばならぬこと
- ・ 純粋に楽しむ家庭
- ③ 夫婦はいかに対処していくか
- ・ 結婚による自分の弱点の発見
- ・ おかしいとり合わせ
- ・ 幸福感の味わいかた
- ・ 女の方がバカだと思えばこそ
- ① 女の生きがいは何に見出すか
- ・ 恋から愛への変質
- ・ 愛は盲目的に信じることである
- ・ 持ち味を生かされている妻
- ・ 女は何に興味を見出すか
- ② もう後へは退けないとき
- ・ 社会との関係を自ら持つとき
- ・ ひきつける自然の色気
- ・ 興味が持てない不幸な感覚
- ・ 妻も知らないあまりに壮絶な姿
- ・ 一人の人間の美しいひとつの考え方
- ③ 本当に心から愛せるか
- ・ 愛は襲われるものである
- ・ すべての人は“眼がない”
- ・ 愛と憎しみとは同質の感情
- ・ 愛するに到るまで
- ① 夫は自分の望むようになるか
- ・ 夫は引き返せない
- ・ ともに傷つかなければ他人になる
- ・ 夫を見る妻の心得
- ・ 夫の話を受けとめる素地のない妻
- ② この世の中を一人で歩けるように
- ・ 私に起こった二つの出来事
- ・ 子供に期待する第一の点
- ・ 母が願うささやかな生
- ・ 一人の大切な“人間”のけじめ
- ・ 自ら切り開いていく自覚
- ③ 心の最も弱い部分
- ・ 引き戻すことは不可能である
- ・ “コロシテヤル”とうずくまった私
- ・ 母性本能を失った女たち
- ・ 自分の人生を持てなくなった人たち
- ・ 母のなし得る偉大なこと
- ④ 一生の運命の鍵
- ・ 自分の行為を信じるために
- ・ 外に向かって心を開かなくなるとき
- ・ この世を生きる夢
- ・ 人生は苦しみを触覚として
- ① 愛される女の要素
- ・ 自分を相手に与えつくす女
- ・ バランスのとれた魅力
- ・ 愛される女の美しさ
- ・ かわいい女になる秘訣
- ② 自分でそこへ歩いていく楽しみ
- ・ “目的”は生きがいになる
- ・ 自分の中にいる敵
- ① 夫によってひき出された女
- ・ 私の弱点をまっ先にあばいた男
- ・ まんまとひっかかった私
- ・ 不思議な運命のとき
- ・ 強烈で鮮やかな岐路に立った日
- ・ 不細工にありのままを生きること
- ・ 同人誌をとりまいたグループ
- ・ 二人が無名で、お金もないしあわせ
- ・ 何があってもついていく
- ・ 人生はノアの方舟である