自分の生と死を自分でデザインする
人は皆、多かれ少なかれ、それぞれの病と共に人生を生きる。それが普通なのだ。健康しか知らない人より、病気によって精神の陰影を与えられ、それによって少しはまともになる。病気という神から贈られた「体の刺」にどう対処して生きるかということが、老年のテーマである。してもらうのは当然と思わぬこと、何事も自分でやろうとすること、一生涯身だしなみに気をつけること、昔話はほどほどに、老いに対して自然であること──老年を豊かに生きるために、曽野綾子が贈る123の金言!
著者プロフィール
作家。1931年、東京生まれ。聖心女子大学文学部英文科卒業。
ローマ法王庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章。日本芸術院賞・恩賜賞受賞。著書に『無名碑』(講談社)『神の汚れた手』(文藝春秋)、『貧困の僻地』『人間の基本』『人間関係』(以上、新潮社)、『老いの才覚』(ベストセラーズ)、『人生の収穫』(河出書房新社)、『人間にとって成熟とは何か』(幻冬舎)、『夫婦、この不思議な関係』『沖縄戦・渡嘉敷島「集団自決」の真実』『悪と不純の楽しさ』『私の中の聖書』『都会の幸福』『弱者が強者を駆逐する時代』『この世に恋して』『想定外の老年』(以上、ワック)など多数。
目次
- 五番目の前書き
- 最初の前書き──自己救済の試み
- 二番目の前書き──晩年のはじめに
- 三番目の前書き──私は感謝して死を迎えたい
- 文庫版のための前書き
- 他人が「くれる」ことを期待してはいけない
- してもらうのは当然、と思わぬこと
- 自分でできぬことは、まず諦めること
- 老人であることは、肩書きでも、資格でもない
- 身内の者になら何を言ってもいい、と思ってはいけない
- 自分の苦しみがこの世で一番大きい、と思うのをやめる
- 自分の生涯は劇的だ、と思うのをやめること
- ヒマにあかせて、他人の生活に口出しするのはいけない
- 他人の生き方を、いいとか悪いとか決めずに認めること
- 愚痴を言って、いいことは一つもない
- 明るくすること
- 「ひがむ」のはあまりにも凡庸だから、意識してやめること
- 何事も自分でやろうとすること
- 若い時よりももっと甘やかしを避ける
- 若さに嫉妬しないこと。若い人を立てること
- 若い世代の将来には、ある程度、冷淡になること
- 若い世代は自分より忙しいのだ、と肝に銘じる
- 生活の淋しさは、誰にも救えない
- 子供が心配をかけたら、感謝すること
- 噓をつかぬこと
- 攻撃的であることをやめること
- 態度が悪いといって、相手を非難するのは無意味である
- 医者に冷たくされても怒らないこと
- 同じ年頃の相手とつき合うこと
- 定年を一くぎりとして、新たなスタートと思うこと
- 一般に、自分が正しいと思わないこと
- 親類縁者の中で最年長になっても、支配的な立場を取らない
- 楽しみを得たいと思ったら、金を使う覚悟を
- ひとりで遊ぶ癖をつけること
- 孫が老人を無視することがあっても、深刻に思うことはない
- 孫の守りをしてやること。そして恩にきせぬこと
- 墓のことなど心配しないこと
- 子供を当てにするのは、功利的な、いやな親である
- 子供の仕事、交際の分野に口を出してはいけない
- 交際範囲やルールを、若い世代に押しつけない
- 他人の手を借りる時は、職業としてやってくれる人を選ぶ
- 金さえ出せば、と思うのは浅はかである
- 年寄りは、何事にも感謝の表現を
- 他人に仕事をやらせる時は口を出さない
- 自分で処理できない心遣いは、他人にしようとしない
- 自分が世話できない動物は飼わない
- ペットの話をするようになると、老化の兆し
- 固定観念を捨てること
- 新しい機械を使うことを、絶えず積極的に覚えること
- 自分への慰めの言葉を他人の非難に使わない
- ほめ言葉にさえも注意すること
- 位階、勲等をほしがったりしないこと
- 芸術の分野で、けなされることのない老大家になったら
- 「平均寿命」を過ぎたら、公務に就かぬこと
- ひたすら優しくされたら、衰えを自覚する
- 世間や周囲に対して、見えすいた求愛をしないこと
- 年をとって離婚すると、楽にはなるが、淋しさはきびしい
- 老人であることを、失敗の言い訳に使わない
- もの忘れ、足腰の不自由などについて、言い訳をしない
- できるだけ早い時期から、健康管理に役立つ本を読む
- 健康器具、薬などをやたらに他人にすすめない
- 排泄に関して、あまり神経質にならない
- 突然の性格や感情の変化はどこかに病気がある
- 乗り物の混む時に移動せぬこと
- 荷物を持たぬこと
- 食べ物の食べ方には、よく考えて用心し配慮する
- 食事の時は、できるだけ礼儀正しく
- 視力、聴力などの不自由に対しては、すぐに手当すること
- 口臭、体臭に気をつけること
- 年をとると不潔に平気になる人がいる。よく洗うこと
- 手洗いに入る時は、戸をよく閉め、鍵をかけること
- 一生涯、身だしなみに気をつけること
- 自分が容貌の衰えを気にするほど、他人は気にしていない
- 身のまわりのものを、常に新品と取り替える
- よく捨てること
- 死ぬまでに、ものを減らして死ぬこと
- 何でも欲しがらないこと
- 何かを言い残して死のう、などと思わないこと
- 草木の世話ばかりしていると早く惚ける
- 何かになり損ねた過去があっても
- 友だちが死んでいっても、けろりとしていること
- 自分が体力、気力のある老人でも威張らないこと
- 老人同士かたまって行動する時、慎み深くする
- 昔話はほどほどに
- 「昔はもてたもんだ」は、言わないほうがいい
- 慌てないこと。急がないこと。駆けないこと
- 外へ出たら緊張していること
- よく歩けるように、脚を鍛えておくこと
- 毎日、適当な運動を日課とすること
- 電話、郵便などは自分でやろうとすること
- 若い世代の足手まといになるような所へは行かない
- 風雨を恐れぬこと
- 大いに旅に出たらいい。いつ旅先で死んでもいい
- 引っ越し、大掃除がある時、老人は避難したほうがいい
- 冠婚葬祭などは、一定の時期から欠礼する
- 夕方には早めに灯をつけること
- 早寝、早起きよりも、遅寝、遅起きの癖をつける
- 朝早く目覚めることを嘆かないこと
- 町を愛すること
- 若いうちから、楽しかったことをよく記憶しておくこと
- 老いと死を、日常生活の中で、ちょくちょく考えること
- 長生きに耐えられるかどうかを考えておくこと
- 最期は自然に任すのもいい
- 老人の〝三つの敵〟を拒否するには、当人の気力もいる
- 遺言状などは、気楽に書くこと
- 病気が回復しないと思わぬこと
- 理不尽な処遇を運命から受けようと、その報復は考えない
- 自殺は、この上ない非礼である
- 老いに対して、自然であること
- 身内以外に、最終的にみてくれる人はいない
- 毎日、世話をしてくれる他人に感謝すること
- 人間的な死にざまを、自然に見せてやること
- 政治的行動は、精神の硬化によるものだ
- 死ぬ日まで、働けることは最高の幸福である
- 金がなくなったら、最後は野垂れ死にをする覚悟を
- 金も身寄りもなくなったら、周囲の人間にタカること
- 幸福な一生も、不幸な一生も、一場の夢
- 死によって得られる可能性をしあわせに思うこと
- 宗教について、心と時間を費やすこと
- 一生涯、努めること
- 老年の一つの高級な仕事は、人々との和解である
- 徳のある年寄りになること
- 老年の苦しみは、人間の最後の完成のための贈り物
- 「ろくでもないこの世」と思う意識を
- 死に急がぬこと
- 老年を特殊な、孤立した状況と考えてはいけない
- 自分の生命、愛、善意を残したいと思ったら
- 自分の死によって、残された者に喜びを与えること
- 最初の後書き──汚辱にまみれても生きよ……
- 二番めの後書き
- 三番めの後書き
- 四番目の後書き