牡蠣とトランク 表紙

牡蠣とトランク

畠山重篤(牡蠣の森を慕う会代表)著/パトリック-ルイ·ヴィトン(ルイ・ヴィトン五代目当主)画
定 価:
本体1500円+税
判 型:
四六判上製
ページ数:
160ページ
ISBN:
9784898314333
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牡蠣(かき)の友情

「家が流されるー」
「アアー、船も、工場も流れてゆくー」
……
やがて二波目が襲ってきた。第一波とは桁(けた)違いの高さの、黒い水の壁だ。映画『天地創造』のノアの方舟のシーンを思い出した。

話は50年前にさかのぼる──
フランスの牡蠣(かき)にウィルス性の病気が発生、フランス料理には欠くことができない牡蠣が絶滅の危機に瀕した。これを伝え聞いた漁師たちは「よし、宮城ダネ(牡蠣の種苗)を送って助けよう」と立ち上がった。
東日本大震災で牡蠣養殖のイカダが全滅したことを知ったフランスでは「今こそ恩返しだ!」とばかりに料理人組合が音頭をとって支援にのり出した。
フランス料理界の大御所アラン・デュカスらのよびかけに、日頃から環境問題に熱心なルイ・ヴィトンも支援に加わった。
畠山さんの養殖場を訪れたパトリックさんは創業者ルイ・ヴィトンの直系で五代目当主にあたる。畠山さんが本書の話を切り出したところ「それなら、わたしの絵を入れてはどうか」と、“友情出演”の申し出が……。
実はパトリックさんの絵は、フランス社交界で高い評価をうけており、オークションで高値で落札されたことで有名な存在だという。
本書は、大震災・大津波の貴重な証言記録であるとともに、牡蠣の友情がはぐくんだ絆が、いまいっそう力強く日仏を結びつけた感動の物語でもある。

著者プロフィール

畠山重篤(はたけやま・しげあつ)
1943年中国・上海生まれ。宮城県気仙沼湾でカキ・ホタテの養殖業を営む。1989年、「森は海の恋人」を合言葉に植林活動を始める。漁民による森づくりの活動は大きな反響をよび、1994年朝日森林文化賞をはじめ表彰多数。2004年より京都大学フィールド科学教育センター社会連携教授。2012年、国連より世界で5 組の「フォレストヒーローズ」に選出、2015年、「KYOTO 地球環境の殿堂」で殿堂入り。
著書に、『日本〈汽水〉紀行』(文藝春秋/日本エッセイスト・クラブ賞)、『漁師さんの森づくり』(講談社/小学館児童出版文化賞)、『森は海の恋人』『リアスの海辺から』『牡蠣礼讃』(以上、文藝春秋)、『鉄は魔法つかい』(小学館)、『カキじいさんとしげぼう』(日・英・フランス・ロシア・ポルトガル・スペイン各国語版/カキの森書房)ほか。

パトリック− ルイ・ヴィトン(PATRICK-LOUIS VUITTON)
1951年生まれ。創業者ルイ・ヴィトンの直系、5代目にあたる。1973年、一職人としてパリ郊外のアニエールにある工房に入社。ハードトランクのベースとなるポプラ材の組み立てからキャリアをスタート。ヴィトン家の伝統を引き継ぎ、ブランド・イメージを守りながら、同工房の責任者を10年間務める。現在、ルイ・ヴィトン、スペシャルオーダー部門およびブランドの伝統・サヴォアフェールのコミュニケーション責任者。
水彩画の名手でもあり、2009年、アニエールの工房の誕生150周年を記念した「サヴォアフェール展」ではスペシャルオーダーキット&水彩画材用の小型トランクを制作。この作品はルイ・ヴィトンとサザビーズのオークションで落札され、同じく150周年を迎えた赤十字へ寄付された。

目次

プロローグ

Prologue

 

1.天国のような海

  Paysage du golfe de MOHNE

 

2.石頭

  Vuitton

 

3.カキ研究所

  Dr. I mai

 

4.マドモアゼル・カトリーヌ

  Mademoiselle Catherine

 

5.森は海の恋人

  La mer désire la forêt

6.巨大津波襲来

  Lʼ énorme tsunami

 

7.牡蠣の恩返し

  Un généreux retour

 

8.ルイ・ヴィトンからの支援

  Monsieur Patrick

 

9.復興へ

  Vers la reconstruction

 

エピローグ

Epilogue

 

あとがき

Postface

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