2015年3月期決算で、トヨタの最終利益は2兆円を超えた。これは日本企業初であり、メディアでも大きく取り上げられた。トヨタの世界的な強さの源泉は何だろうか。それは、ジャスト・イン・タイムや現地現物主義を始めとする「トヨタ生産方式」に他ならない。
この方式を創出したのが、豊田喜一郎である。無駄な在庫を見て、ジャスト・イン・タイムを思い付いたのだ。ところが、喜一郎はかねてから乗用車の開発を夢見ていたが、志半ばでこの世を去る。
だが、その無念な思いが、残された者たちの大きなバネとなった。以来、トヨタのDNAは脈々と受け継がれ、トヨタは世界に名だたる企業へとのぼり詰めた。
どんな困難があっても挑戦し続けた喜一郎の生涯は、全ビジネスマンに大きな示唆を与える!
著者プロフィール
野口 均(のぐち・ひとし)
フリーランス・ジャーナリスト。1947年、埼玉県生まれ。小説家を志しつつ早稲田大学第一政治経済学部を卒業。雑誌記者を経て、87年にフリーとなり、91年まで野口雄一郎の筆名で「中央公論」「諸君!」他にリポートを発表。以来、「プレジデント」「文藝春秋」「日経ビジネス」「フォーブス日本版」などを舞台に、政治・経済・外交問題を主なテーマに執筆活動を続けており、近年は人物論にも異彩を放っている。著書に『ファンドの時代』(千倉書房)、『逆境のリーダー・石橋信夫』(ダイヤモンド社)、『会社員 負けない生き方』(平凡社新書)などがある。
目次
プロローグ トヨタの三つの謎
第1章 豊田家の父と子
- 1 社風の源流
- 2 「発明狂」の子に生まれて
- 3 苦闘する父の背
- 4 父と子の新たな出発
第2章 喜一郎の才能の萌芽
- 1 喜一郎の覚醒期
- 2 利三郎の役割、喜一郎の意志
- 3 後継者への曲折した道程
第3章 紡織業から機械メーカーへの転進
- 1 織機メーカーへ変身の奇貨
- 2 世代交代を告げた自動織機製作所誕生
第4章 なぜ自動車参入か
- 1 自動織機世界制覇の陰で
- 2 喜一郎の密かな企て
- 3 押し寄せる難関
第5章 喜一郎、走り出す
- 1 自動車部設立と利三郎との軋轢
- 2 「火の玉組」奮戦
- 3 大衆車路線への賭け
- 4 ボロボロのトヨダ号発進
第6章 トヨタ生産方式始動
- 1 ジャスト・イン・タイムの試行錯誤
- 2 トヨタ自動車工業、嵐の海へ
- 3 独創的構想の実践
- 4 戦時体制下の誤算と失意
第7章 喜一郎の不運
- 1 不運の連鎖
- 2 喜一郎の首
エピローグ 喜一郎の「遺志」の実現
新版あとがき