平成の時代に
こんなことがあっていいのか!
こんなことがあっていいのか!
市民の平和・安全を守るはずの警察が、自らの名誉欲のため、積極的に事件を捏造し、無辜の市民を捕まえたとしたら……? 2003年に鹿児島県志布志町で実際に起きた「志布志事件」を追った、渾身のノンフィクション! 事件の端緒となるのは、同年春に行われた第15回統一地方選の鹿児島県議選。初出馬ながら見事に当選した中山信一さんはじめ他12名が、公職選挙法違反容疑で逮捕・起訴された──。自白を得るための脅しや騙し、「踏み字」を使った取調べ、平均身柄拘束日数が177日という長さなど、異常さの目立つこの事件は、政治家による策動、警察幹部の出世欲の暴走が生んだ“でっちあげ事件”だった……。
著者プロフィール
粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県西宮市生まれ。大阪大学文学部西洋史学科卒業。ミノルタカメラを経て、1982年より共同通信記者、2001年退社。社会問題を中心に週刊誌、月刊誌に執筆中。神戸市在住。著書に『サハリンに残されて─領土交渉の谷間に捨てられた残留日本人』(三一書房)、『瓦礫の中の群像─阪神大震災ルポ』(東京経済)、『あの日、東海村で何が起こったか』(七つ森書館)、『アスベスト禍 国家的不作為のツケ』(集英社新書)、『大阪美人姉妹殺害事件 神さんに嫁入りした娘たち』(扶桑社)など。
目次
序章 誰もがウサギになる恐怖- 志布志事件とは
- これは国家による犯罪だ
- 突然の連行
- 病院から取り調べ室に戻す
- 「川畑さん、にらめっこしようや」
- キリシタン弾圧を思わせる「踏み字」
- コソコソする刑事たち
- 持ち去られた予約台帳
- 大番狂わせの初当選
- 「有志者」を探す警察
- 庭に置かれていた日本の焼酎
- タイムスリップ
- 「私はもう死にたい」
- 女性警官がひそかに録音していた
- 「配った」から「もらった」に
- 「検証」という名の「練習」
- 「いたしっぱれ」
- 「噓を言っていれば四浦の人、みんな逮捕しますよ」
- 滝つぼに身を投げた男
- 「一緒に死のう」
- 「お前が間違っていたら拳銃で撃つぞ」
- 釣り人の発言を改ざんした調書
- 会合日時を一回も特定せず
- 「まあまあ、そんなこと言わないの」
- 「真実は、絶対に曲げない」
- 「救急車があるから大丈夫だ」
- 「郷愁作戦」
- 保釈阻止のための違法な再逮捕
- 「お前が否認しているから、主任試験も受けられない」
- 必死に練った対策
- とっさの録音
- 「私たちも特高みたいなことをしたくないんです」
- 過酷な取り調べで発狂寸前
- 「天罰だ」と言った刑事
- 「死刑にしてやる」
- 「この日は、お前がいないと困る」
- 携帯電話不通だったのがポイント
- 「娘に迷惑かけて、それでも母親と言えるのか」
- 都合がよかった地理環境
- 不思議なことを言う磯辺警部
- 断腸の思いで辞職を決意する
- 「お前は女優か」
- 「弁護人を解任しろ」
- しらけた捜査本部
- 突然、叫ばせる刑事
- 「修業だ、がんばれ」
- 湧き上がってきた「おかしい」の声
- 「しゃがめ」
- 変遷する買収金額
- 「おらばんか」
- 大警視
- 「車が来るだけで震える」
- 寝ている刑事
- 消防団員への懺悔
- 「死ぬまで忘れない」
- 交差点の女
- 空欄を作っておいた調書
- 弁護士の解任を迫る
- 名を偽る女性刑事
- ここにも出た「踏み字」
- 「お前は麻原以上だ」
- 捜査の端緒は「匿名情報」?
- 「情報の一元化」に秘められた意図
- 公判で藤山さんと中山さんが一転否認へ
- 傍聴席から夫を一喝した妻
- 純白のジャケット
- 全員が無罪主張の「火の玉」に
- 拘置所で年を越した中山夫妻
- 見事に捏造された検事調書
- 息子の分まで中山社長がくれるのではないか
- 喧嘩までしたことに
- 検察誘導の日時特定
- 四回目の会合もリアルに描かれる
- 検事など辞めて小説家になればいい
- 取り調べ小票
- 「死んでも出さない」「出たら飛ぶ」
- 女性警官の録音場所もごまかす
- 早くから知っていた中山さんのアリバイ
- 起訴後にアリバイを知ったことにする芝居
- 三発の花火
- 祖父母を信じ裁判に通った幼い子
- 「ありもしない事実があったかのように」
- 否定を避けた任意性
- 裁判所の責任は
- 証人が次々とインチキ工作を暴露
- ボロを出した濵田と磯辺
- 検察は警察に騙されたのではない
- 裁判所を訴えたかった
- 川畑順子さんの機転
- 土下座をした磯辺
- 意図的に奪ったアリバイ証明の機会
- 協力者?
- 交通事故
- 「中山を逮捕せよ」の申し入れ書
- 現職町長を巡る噂
- 崩れた「無投票」、政争激化とある業者
- 裏金作りの舞台
- 列島改造が終焉した日本社会の縮図
- 軽すぎる処分
- 続く裁判
- 地方の捜査本部は新米検事や未熟なキャリアでいいのか
- 自白偏重はメディアそのもの
- 「ずさんな捜査」どころではない