警察の犯罪

粟野仁雄(ジャーナリスト) 著
定 価:
本体1400円+税
判 型:
四六版並製
ページ数:
296ページ
ISBN:
9784898311233
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平成の時代に
こんなことがあっていいのか!

市民の平和・安全を守るはずの警察が、自らの名誉欲のため、積極的に事件を捏造し、無辜の市民を捕まえたとしたら……? 2003年に鹿児島県志布志町で実際に起きた「志布志事件」を追った、渾身のノンフィクション! 事件の端緒となるのは、同年春に行われた第15回統一地方選の鹿児島県議選。初出馬ながら見事に当選した中山信一さんはじめ他12名が、公職選挙法違反容疑で逮捕・起訴された──。自白を得るための脅しや騙し、「踏み字」を使った取調べ、平均身柄拘束日数が177日という長さなど、異常さの目立つこの事件は、政治家による策動、警察幹部の出世欲の暴走が生んだ“でっちあげ事件”だった……。

著者プロフィール

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県西宮市生まれ。大阪大学文学部西洋史学科卒業。ミノルタカメラを経て、1982年より共同通信記者、2001年退社。社会問題を中心に週刊誌、月刊誌に執筆中。神戸市在住。著書に『サハリンに残されて─領土交渉の谷間に捨てられた残留日本人』(三一書房)、『瓦礫の中の群像─阪神大震災ルポ』(東京経済)、『あの日、東海村で何が起こったか』(七つ森書館)、『アスベスト禍 国家的不作為のツケ』(集英社新書)、『大阪美人姉妹殺害事件 神さんに嫁入りした娘たち』(扶桑社)など。

目次

序章 誰もがウサギになる恐怖
  • 志布志事件とは
  • これは国家による犯罪だ
第1章 「踏み字」
  • 突然の連行
  • 病院から取り調べ室に戻す
  • 「川畑さん、にらめっこしようや」
  • キリシタン弾圧を思わせる「踏み字」
  • コソコソする刑事たち
  • 持ち去られた予約台帳
第2章 ターゲットを変える
  • 大番狂わせの初当選
  • 「有志者」を探す警察
  • 庭に置かれていた日本の焼酎
第3章 自殺未遂に追い込まれた人たち
  • タイムスリップ
  • 「私はもう死にたい」
  • 女性警官がひそかに録音していた
  • 「配った」から「もらった」に
  • 「検証」という名の「練習」
  • 「いたしっぱれ」
  • 「噓を言っていれば四浦の人、みんな逮捕しますよ」
  • 滝つぼに身を投げた男
  • 「一緒に死のう」
  • 「お前が間違っていたら拳銃で撃つぞ」
  • 釣り人の発言を改ざんした調書
  • 会合日時を一回も特定せず
第4章 狙われた集落
  • 「まあまあ、そんなこと言わないの」
  • 「真実は、絶対に曲げない」
  • 「救急車があるから大丈夫だ」
  • 「郷愁作戦」
  • 保釈阻止のための違法な再逮捕
  • 「お前が否認しているから、主任試験も受けられない」
  • 必死に練った対策
  • とっさの録音
  • 「私たちも特高みたいなことをしたくないんです」
  • 過酷な取り調べで発狂寸前
  • 「天罰だ」と言った刑事
  • 「死刑にしてやる」
  • 「この日は、お前がいないと困る」
  • 携帯電話不通だったのがポイント
  • 「娘に迷惑かけて、それでも母親と言えるのか」
  • 都合がよかった地理環境
第5章 本丸へ、狙いは議員資格剝奪
  • 不思議なことを言う磯辺警部
  • 断腸の思いで辞職を決意する
  • 「お前は女優か」
  • 「弁護人を解任しろ」
  • しらけた捜査本部
  • 突然、叫ばせる刑事
  • 「修業だ、がんばれ」
  • 湧き上がってきた「おかしい」の声
  • 「しゃがめ」
  • 変遷する買収金額
  • 「おらばんか」
  • 大警視
第6章 名を偽る女性刑事
  • 「車が来るだけで震える」
  • 寝ている刑事
  • 消防団員への懺悔
  • 「死ぬまで忘れない」
  • 交差点の女
  • 空欄を作っておいた調書
  • 弁護士の解任を迫る
  • 名を偽る女性刑事
  • ここにも出た「踏み字」
  • 「お前は麻原以上だ」
  • 捜査の端緒は「匿名情報」?
  • 「情報の一元化」に秘められた意図
第7章 一転否認 波乱の公判
  • 公判で藤山さんと中山さんが一転否認へ
  • 傍聴席から夫を一喝した妻
  • 純白のジャケット
  • 全員が無罪主張の「火の玉」に
  • 拘置所で年を越した中山夫妻
第8章 警察とグルで事件をでっちあげた検察
  • 見事に捏造された検事調書
  • 息子の分まで中山社長がくれるのではないか
  • 喧嘩までしたことに
  • 検察誘導の日時特定
  • 四回目の会合もリアルに描かれる
  • 検事など辞めて小説家になればいい
  • 取り調べ小票
  • 「死んでも出さない」「出たら飛ぶ」
  • 女性警官の録音場所もごまかす
  • 早くから知っていた中山さんのアリバイ
  • 起訴後にアリバイを知ったことにする芝居
第9章 無罪判決
  • 三発の花火
  • 祖父母を信じ裁判に通った幼い子
  • 「ありもしない事実があったかのように」
  • 否定を避けた任意性
  • 裁判所の責任は
  • 証人が次々とインチキ工作を暴露
  • ボロを出した濵田と磯辺
  • 検察は警察に騙されたのではない
  • 裁判所を訴えたかった
  • 川畑順子さんの機転
  • 土下座をした磯辺
  • 意図的に奪ったアリバイ証明の機会
第10章 仕掛け人は誰か
  • 協力者?
  • 交通事故
  • 「中山を逮捕せよ」の申し入れ書
  • 現職町長を巡る噂
  • 崩れた「無投票」、政争激化とある業者
  • 裏金作りの舞台
  • 列島改造が終焉した日本社会の縮図
終 章 他人事ではない志布志事件
  • 軽すぎる処分
  • 続く裁判
  • 地方の捜査本部は新米検事や未熟なキャリアでいいのか
  • 自白偏重はメディアそのもの
  • 「ずさんな捜査」どころではない
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