論理的発想のバイブル!
戦前は、科学振興のため「数学が教育の中枢」となった。ところが、戦後の「お受験教育」による「面白くない数学」が長く続き、さらに今度は一転して「ゆとり教育」指向によって歪曲され、ついに日本の青少年の数学力がみるみる低下していくことになった。日本人が数学力を失ったらどうなるか? 経済成長は止まり、国防すら危うくなることは間違いない!──数学の難しさは問題を解くテクニックが面倒くさかっただけの話で、発想はまことにおもしろく、かつ有益なものだと語る著者。仕事に役立つ論理的発想のバイブル。
著者プロフィール
小室直樹(こむろ・なおき)
政治学者、経済学者。1932年東京生まれ。京都大学理学部数学科卒業。大阪大学大学院経済学研究科、東京大学大学院法学政治学研究科修了。東京大学法学博士。この間、フルブライト留学生としてアメリカに留学し、ミシガン大学大学院でスーツ博士に計量経済学を、マサチューセッツ工科大学大学院でサムエルソン博士(1970年ノーベル賞)とソロー博士(1987年ノーベル賞)に理論経済学を、ハーバード大学大学院ではアロー博士(1972年ノーベル賞)とクープマンス博士(1975年ノーベル賞)に理論経済学を、スキナー博士に心理学を、パースンズ博士に社会学を、ホマンズ教授に社会心理学を学ぶ。著書に、『危機の構造』『経済学をめぐる巨匠たち』(以上、ダイヤモンド社)、『ソビエト帝国の崩壊』『韓国の悲劇』『国民のための経済原論Ⅰ・Ⅱ』(以上、光文社)、『「天皇」の原理』(文藝春秋)、『小室直樹の資本主義原論』『日本人のための経済原論』『数学嫌いな人のための数学』『論理の方法』(以上、東洋経済新報社)、『日本の敗因』(講談社)、『小室直樹の中国原論』『日本人のための宗教原論』(以上、徳間書店)、『資本主義のための革新』(日経BP社)、『痛快!憲法学』『日本人のためのイスラム原論』『日本国憲法の問題点』(以上、集英社インターナショナル)、『硫黄島 栗林忠道大将の教訓』『日本国民に告ぐ』(以上、ワック出版)その他多数。
目次
- 真っ赤な嘘も数学的には正解
- 存在しないものに関しては何を言っても正しい
- 数学が提起した「存在問題」の重要性
- なぜケネディは「月着陸」を公約できたか
- 人間が月へ行けたのは「存在問題」解決のおかげ
- 「存在問題」解決で〝やる気〟を増進させる
- マゼランは確信にみちたハッタリで「存在問題」をクリアした
- 解があるのならコンピューターで無限に接近
- 小野小町を口説いた深草少将の徒労
- 教科書には、解のある方程式だけが選ばれている
- ガウスやガロアは、なぜ天才数学者といわれるか
- 経済学における「存在問題」とは何か
- 社会学における「存在問題」とは何か
- 平重盛とロミオとジュリエット
- 人間の生き方を座標軸でとらえる
- 社会現象は数学的発想で大掴みにできる
- 数学は気合いで理解できる
- 「駅前の大衆」は集合ではない
- ユダヤ教の食物規定に貫徹する集合の論理
- 食物規定があるようでない日本
- 禁止されていなければ何をしてもいいユダヤ教
- 日本人の〝契約〟は本当の契約ではない
- なぜ、いま「無規範」を問題にするのか
- 「礼楽」さえ守れば中国人、ユダヤ教を信じればユダヤ人
- 「共同声明に拘束力はない」と言う外務大臣の無知
- なぜ、日本の政治家が信用されないのか
- 外交上の基本無知による愚行
- 日本人が外交音痴である理由
- 「人類は敵同士、世界は紛争の巷」が世界の常識
- 日本の婚姻制度を数学的に観察する
- 論理の犠牲メアリー・スチュアートの悲劇
- 〝妻である集合〟と〝妻でない集合〟のけじめ
- なぜ日本人の売春ツアーばかりが嫌われるのか
- 薄気味悪さを感じさせる日本人の無規範
- 欧米の裁判には存在しない〝大岡裁き〟
- 裁判所の機能を奪っている日本の警察・検事
- 罪刑法定主義の否定さえ罷り通る不思議な国・日本
- ローマでは、なぜ皇帝と法王の二元支配が可能だったか
- 世俗法が宗教法を侵蝕した理由
- 「民法の精神」こそ、すべての法律の基本
- 近代市民法と古代社会の法の違い
- きわめて数学的な概念、「所有」とは何か
- 日本人にはわかりにくい所有の概念
- 敵と味方を直和分解して考えない日本社会
- 高名な経済学者が平気で犯した〝論理矛盾〟
- 必要条件と十分条件の違い
- 日常的な例で数学的発想を鍛える
- 古代ユダヤ教における預言者の役目
- なぜ、預言者は悲劇的運命を辿るか
- 神と大論争を展開したヨブの論理
- 「死ねば成仏」──日本人の恐るべき仏教誤読
- 救済を保証しないからこそ、仏教は難解
- 仏教とユダヤ教では戒律は数学的に正反対
- 確率論を決定論に摩り替えた日本仏教の堕落
- 信仰が不十分とは、信仰していないのと同じ
- 宗教戦争はなぜ、残虐になるか
- 初めて宗教の自由を認めたウェストファリア条約の意義
- ヨーロッパでは、面従腹背でも問題はない
- 袴田・宮本論争は、なぜ低次元なのか
- 〝才色兼備〟を否定すると……
- たった一つの反例でも論理的否定は成立する
- 正、逆、裏、対偶を論理に活かす法
- 非ユークリッド幾何学は、どうして誕生したか
- 公理の概念を根底から変えた非ユークリッド幾何学
- なぜ、科学だけは無限の進歩が可能なのか
- 科学の本質は〝研究方法〟にこそある
- いかなる俗説も科学の対象になり得る
- 社会科学に、完全な科学はあり得ない
- 数学の論理を理解していたマルクス
- 価値法則を解明したワルラスの業績
- 経済の本質とはすべてが依存しあうこと
- 数学を使って循環論から脱出する法
- 「意見の否定」を「人格の否定」と勘違いする日本人
- 「批判」とは、一種の「継承」である
- 近代西欧社会は、なぜジョーカーを必要としたか
- 数量化は人間の作為の産物
- 数量化しなくても客観的比較はできる
- 「実数の公理」とは何か
- マイナスの商品数量とは何を意味するか
- マイナスの商品価格がついているものとは?
- 数学の得点と英語の得点を足すことに、意義はあるのか
- 物価指数やGNPは信用できるともかぎらない
- 全体に対する命題は、部分に対しても成り立つのか
- 「合成の誤謬」とは何か
- 個人が合理的でも社会は不合理な選択をする