いま、論語を学ぶ

渡部昇一著作集/対話①

渡部昇一(上智大学名誉教授)・谷沢永一 著
定 価:
本体1600円+税
判 型:
四六判上製
ページ数:
288ページ
ISBN:
9784898311813
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人生は論語に窮(きわ)まる!

『論語』はすばらしく、そして凄味のある本だ。性善説や性悪説のような「決めつけ」をせず、あるがままに人間性を見、聞き手にすべてを任せる。そこには相手を説得する支配欲とは無縁の、本当に生一本(きいっぽん)の素直な人物である孔子像が浮かび上がってくる。『論語』は「遠くに住む友人がやってくる。楽しいではないか」という生活の実感に溢れ、身近なものなのだ。読み易く、分かり易い、『論語』本の決定版!

著者プロフィール

渡部 昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英文学者。文明批評家。1930年、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr.Phil.,Dr.Phil.h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に『英文法史』などの専門書、『文科の時代』『知的生活の方法』『知的余生の方法』『アメリカが畏怖した日本』『「修養」のすすめ』『「日本の歴史」①〜⑦』『読む年表 日本の歴史』などの話題作やベストセラー多数がある。

谷沢 永一(たにざわ・えいいち)
関西大学名誉教授。1929年、大阪市生まれ。関西大学大学院博士課程修了。専門は日本近代文学、書誌学。社会評論にも幅広く活躍。サントリー学藝賞、大阪文化賞、『文豪たちの大喧嘩─外・逍遙・樗牛』で読売文学賞受賞。著書に『完本・紙つぶて』『百言百話』『回想 開高健』『人間通』『歴史通』など多数がある。2011年3月逝去。

目次

プロローグ 『論語』の魅力 (1)余力
  • 親を養うということ
  • 社会生活をきちんとしていれば教養は自ずからつく
(2)改心
  • 寒風吹きすさぶ中に立つ決意
  • 友だちになろうと思われる人間になれ
  • 自分より劣った者を友にする人は成長しない
  • 過ちを改めた清水幾太郎の態度
  • 過ちを改めた者に対する非難の論法
(3)距離
  • 友と付き合う二つの態度
  • 媚びる恭しさは辱められる
  • 媚びる態度は利己主義から出てくる
(4)待つ
  • 人生とは八割以上が待つことである
  • 昼行灯で終わる覚悟
  • 人の危うさを知り、信用できる者を見分ける力
(5)評価
  • 最終的に世間は自分を見てくれる
  • 偽善のメッキは必ずげる
  • 欠点を匿そうとするところに偽善が生じる
(6)大物
  • 「器」の人と「器」でない人
  • 「器」の人の限界
(7)学ぶ
  • 頭にはめられた箍をはずすことが必要だ
  • お手本となる河合栄治郎の勉強法
  • 思い込みの燃料は功名心という汚い根性
  • 大学で学ぶ意味の一つは謙遜を知ることにある
(8)信用
  • 「信」がなければ何事もなし得ない
  • 金を誤魔化さなければ極貧に陥ることはない
  • 賭博の借金は必ず返すのが紳士の条件
  • 借金返済に出てくる日本の国民性
(9)批判
  • これだけは許せないという基準を持つ
  • 「一視同仁」は人間にできるものではない
  • 露骨な批判を嫌う日本社会の雰囲気
(10)利益
  • 商取引の根本は相互利益である
  • 自分の利ばかりを図ると怨みを買う
  • 官僚は民間をいじめて音を上げさせたあと、利を持って天下る
(11)世間
  • 人は人を認めたがっているものだ
  • 実力があれば隠れたままで終わることは考えられない
  • 世間は人を探している
(12)運
  • この世には人力で防げない悪運がある
  • 運命のうちの何割かは理に合わないことが起こる
  • 努力しても駄目な場合は、運が悪いと思ってあきらめろ
(13)楽しむ
  • 「オタク」は「好む人」にすぎない
(14)学者
  • 理想の学者像とは何か
  • 知ったことをみしめて味わう境地
  • 本当の読書家の資格
(15)自信
  • 「自信」には思わぬ幸運を引き寄せる力があるかもしれない
  • 人間の知恵など小さいものだ
  • 孔子を大きく感じさせた言葉
  • マイナス感情を起こす余地のない考え方
(16)吝嗇(りんしょく)
  • ケチは人間好きの要素が欠落している
  • 貧乏でもケチにならない生き方がある
  • 人付き合いを育む心
(17)師
  • 君子のイメージ
  • 縁ある者に親切にする
  • 学校以外で触れ合う師を持つ
(18)信頼
  • 政治の根本は「計算」でなく「感情」である
  • 「信頼」が崩れたとき、政治は成り立たなくなる
  • 「空気」におもねる日本の政治家
  • 邪悪な光に頼って出てきた二世議員たち
(19)志
  • 志を売らずに生きて栄えを得た人
  • 五十年を耐えて生き抜いた人への尊敬
  • 怪しげな道にわざわざ入らない生き方
(20)融通
  • 「四つの勿れ」の戒め
  • 「上善は水の如し」に通じる精神
(21)時間
  • 時間には二つの種類がある
  • 時間に負けないための智恵
  • 時間に負けないものは何か
(22)熟成
  • 人生の芽、穂、実の三段階で評価する
  • 駄目なら三年でクビを切るアメリカの大学
  • 血で血を洗う競争の生産性
  • 早熟を讚えるのはいかがなものか
  • 若いときの印象が強すぎることで起こる錯覚
(23)若さ
  • 「畏友」の正しい使い方
  • 四十代で世に聞こえない人が大きな仕事をするのは難しい
  • 若いころからこつこつと積み重ねことが大切である
  • 四十歳になると自分の価値は下がると思え
  • 問題意識の差が能力に出てくる
(24)理想
  • 人生を楽しむひととき
  • 仕事に追われていると気持ちが素寒貧になる
(25)正義
  • 身内をかばうのは人間として最低限の倫理
  • 「正義」は人を闘争に駆り立てる
  • 「ライト」と「ナチュラル」
  • 両方が成り立つようにはからうのが「直」の論理
(26)勇気
  • 「蛮勇」というマイナスの勇気がある
  • 戦うことができるから調停する力が出てくる
  • 一生を通じて輝く勲章を手に入れるチャンスをつかまえる
  • 「仁者」と「仁なき勇者」
(27)議論
  • 議論に勝つためだけの論を相手にするな
  • 虫のいい話を真に受けてはいけない
  • 責任感のない相手と議論しても、らちがあかない
(28)親疎
  • 親しい人に情報を漏らさない人は世間から捨てられる
  • 何事も人を選ばなければいけない
  • 親密度を増すシナリオ
(29)努力
  • 努力の第一歩は「どうしようか」と考えることである
  • 「やらないための論理」をつくりあげる人
  • 幸運の確率を高くする方法
  • 運を招き寄せる人間のタイプ
(30)気概
  • 「名を残す」という志は人間にとって重要である
  • 男を殺す悪妻の論理
(31)器量
  • 「成功した人の手」と「成功しない人の手」
  • 不渡り手形をなんべんもつかむ懲りない面々
(32)モラル
  • 支配欲が「究極の人間モラル」を妨げる
  • 「恕」とは「他人の心の如し」
  • リラックス・タイムの場所
(33)過ち
  • 日本社会でストレートな責任追及は難しい
  • 過ちを認め、改めることを避ける性質
  • 陸軍、海軍なきあと、残った災いはエリート官僚集団
(34)好学
  • 「フレッシュな材料」を集めて考える
  • 博く学ぶために雑書を読む
  • 雑書として『論語』を読む
(35)友人
  • よい耳学問と悪い耳学問
  • 耳学問はありがたい
(36)習慣
  • いい習慣はいい人生をもたらす
  • 人間は習慣でできあがっている
(37)知識
  • 知識は使うと減るものである
  • 話に「体温が出ているボキャブラリィー」があるか
  • 日に新たにやっていく心構え
(38)博打
  • 飽食無為は博打よりも悪い
  • 博打にかける歯止め
(39)藝
  • 多藝は好ましくない
  • 自分の道を絞る
(40)持続
  • 人生は持続力が大切だ
  • 人生の書としての『論語』
エピローグ 心に住む『論語』 解説 日下公人
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