
人生は論語に窮(きわ)まる!
『論語』はすばらしく、そして凄味のある本だ。性善説や性悪説のような「決めつけ」をせず、あるがままに人間性を見、聞き手にすべてを任せる。そこには相手を説得する支配欲とは無縁の、本当に生一本(きいっぽん)の素直な人物である孔子像が浮かび上がってくる。『論語』は「遠くに住む友人がやってくる。楽しいではないか」という生活の実感に溢れ、身近なものなのだ。読み易く、分かり易い、『論語』本の決定版!
著者プロフィール
渡部 昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英文学者。文明批評家。1930年、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr.Phil.,Dr.Phil.h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に『英文法史』などの専門書、『文科の時代』『知的生活の方法』『知的余生の方法』『アメリカが畏怖した日本』『「修養」のすすめ』『「日本の歴史」①〜⑦』『読む年表 日本の歴史』などの話題作やベストセラー多数がある。
谷沢 永一(たにざわ・えいいち)
関西大学名誉教授。1929年、大阪市生まれ。関西大学大学院博士課程修了。専門は日本近代文学、書誌学。社会評論にも幅広く活躍。サントリー学藝賞、大阪文化賞、『文豪たちの大喧嘩─外・逍遙・樗牛』で読売文学賞受賞。著書に『完本・紙つぶて』『百言百話』『回想 開高健』『人間通』『歴史通』など多数がある。2011年3月逝去。
目次
プロローグ 『論語』の魅力 (1)余力- 親を養うということ
- 社会生活をきちんとしていれば教養は自ずからつく
- 寒風吹きすさぶ中に立つ決意
- 友だちになろうと思われる人間になれ
- 自分より劣った者を友にする人は成長しない
- 過ちを改めた清水幾太郎の態度
- 過ちを改めた者に対する非難の論法
- 友と付き合う二つの態度
- 媚びる恭しさは辱められる
- 媚びる態度は利己主義から出てくる
- 人生とは八割以上が待つことである
- 昼行灯で終わる覚悟
- 人の危うさを知り、信用できる者を見分ける力
- 最終的に世間は自分を見てくれる
- 偽善のメッキは必ずげる
- 欠点を匿そうとするところに偽善が生じる
- 「器」の人と「器」でない人
- 「器」の人の限界
- 頭にはめられた箍をはずすことが必要だ
- お手本となる河合栄治郎の勉強法
- 思い込みの燃料は功名心という汚い根性
- 大学で学ぶ意味の一つは謙遜を知ることにある
- 「信」がなければ何事もなし得ない
- 金を誤魔化さなければ極貧に陥ることはない
- 賭博の借金は必ず返すのが紳士の条件
- 借金返済に出てくる日本の国民性
- これだけは許せないという基準を持つ
- 「一視同仁」は人間にできるものではない
- 露骨な批判を嫌う日本社会の雰囲気
- 商取引の根本は相互利益である
- 自分の利ばかりを図ると怨みを買う
- 官僚は民間をいじめて音を上げさせたあと、利を持って天下る
- 人は人を認めたがっているものだ
- 実力があれば隠れたままで終わることは考えられない
- 世間は人を探している
- この世には人力で防げない悪運がある
- 運命のうちの何割かは理に合わないことが起こる
- 努力しても駄目な場合は、運が悪いと思ってあきらめろ
- 「オタク」は「好む人」にすぎない
- 理想の学者像とは何か
- 知ったことをみしめて味わう境地
- 本当の読書家の資格
- 「自信」には思わぬ幸運を引き寄せる力があるかもしれない
- 人間の知恵など小さいものだ
- 孔子を大きく感じさせた言葉
- マイナス感情を起こす余地のない考え方
- ケチは人間好きの要素が欠落している
- 貧乏でもケチにならない生き方がある
- 人付き合いを育む心
- 君子のイメージ
- 縁ある者に親切にする
- 学校以外で触れ合う師を持つ
- 政治の根本は「計算」でなく「感情」である
- 「信頼」が崩れたとき、政治は成り立たなくなる
- 「空気」におもねる日本の政治家
- 邪悪な光に頼って出てきた二世議員たち
- 志を売らずに生きて栄えを得た人
- 五十年を耐えて生き抜いた人への尊敬
- 怪しげな道にわざわざ入らない生き方
- 「四つの勿れ」の戒め
- 「上善は水の如し」に通じる精神
- 時間には二つの種類がある
- 時間に負けないための智恵
- 時間に負けないものは何か
- 人生の芽、穂、実の三段階で評価する
- 駄目なら三年でクビを切るアメリカの大学
- 血で血を洗う競争の生産性
- 早熟を讚えるのはいかがなものか
- 若いときの印象が強すぎることで起こる錯覚
- 「畏友」の正しい使い方
- 四十代で世に聞こえない人が大きな仕事をするのは難しい
- 若いころからこつこつと積み重ねことが大切である
- 四十歳になると自分の価値は下がると思え
- 問題意識の差が能力に出てくる
- 人生を楽しむひととき
- 仕事に追われていると気持ちが素寒貧になる
- 身内をかばうのは人間として最低限の倫理
- 「正義」は人を闘争に駆り立てる
- 「ライト」と「ナチュラル」
- 両方が成り立つようにはからうのが「直」の論理
- 「蛮勇」というマイナスの勇気がある
- 戦うことができるから調停する力が出てくる
- 一生を通じて輝く勲章を手に入れるチャンスをつかまえる
- 「仁者」と「仁なき勇者」
- 議論に勝つためだけの論を相手にするな
- 虫のいい話を真に受けてはいけない
- 責任感のない相手と議論しても、らちがあかない
- 親しい人に情報を漏らさない人は世間から捨てられる
- 何事も人を選ばなければいけない
- 親密度を増すシナリオ
- 努力の第一歩は「どうしようか」と考えることである
- 「やらないための論理」をつくりあげる人
- 幸運の確率を高くする方法
- 運を招き寄せる人間のタイプ
- 「名を残す」という志は人間にとって重要である
- 男を殺す悪妻の論理
- 「成功した人の手」と「成功しない人の手」
- 不渡り手形をなんべんもつかむ懲りない面々
- 支配欲が「究極の人間モラル」を妨げる
- 「恕」とは「他人の心の如し」
- リラックス・タイムの場所
- 日本社会でストレートな責任追及は難しい
- 過ちを認め、改めることを避ける性質
- 陸軍、海軍なきあと、残った災いはエリート官僚集団
- 「フレッシュな材料」を集めて考える
- 博く学ぶために雑書を読む
- 雑書として『論語』を読む
- よい耳学問と悪い耳学問
- 耳学問はありがたい
- いい習慣はいい人生をもたらす
- 人間は習慣でできあがっている
- 知識は使うと減るものである
- 話に「体温が出ているボキャブラリィー」があるか
- 日に新たにやっていく心構え
- 飽食無為は博打よりも悪い
- 博打にかける歯止め
- 多藝は好ましくない
- 自分の道を絞る
- 人生は持続力が大切だ
- 人生の書としての『論語』