ドイツ参謀本部

渡部昇一著作集/歴史②

渡部昇一(上智大学名誉教授) 著
定 価:
本体1640円+税
判 型:
四六判上製
ページ数:
320ページ
ISBN:
9784898311820
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リーダーとスタッフはいかにあるべきか

ドイツ参謀本部は、原因・結果の連鎖が明快で、後世の教訓になりやすい。近代的大組織の原型であり、今日の「頭脳(シンク・)集団(タンク)」の先駆的形態をなし、「リーダー」と「スタッフ」のバランスにこそ、組織が輝く秘訣があることを教えてくれる。重宝な歴史の鑑であるのだ。リーダー不在のいまこそ、日本は史上最強の「組織集団」に学ぶべきだ!

著者プロフィール

渡部 昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英文学者。文明批評家。1930年、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr.Phil.,Dr.Phil.h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に『英文法史』などの専門書、『文科の時代』『知的生活の方法』『知的余生の方法』『アメリカが畏怖した日本』『「修養」のすすめ』『「日本の歴史」①〜⑦』『読む年表 日本の歴史』などの話題作やベストセラー多数がある。

目次

まえがき 第1章 近代組織の鑑──ドイツ参謀本部 ──フリードリッヒ大王が制限戦争時代に残した遺産
  • 「教訓の宝庫」としてのドイツ参謀本部
  • ヨーロッパの陸戦史、四つの時代区分
  • 宗教的情熱からはじまり、宗教への幻滅を残した三十年戦争
  • 三十年戦争が残した教訓
  • ルール違反を許さないスポーツのような戦争
  • 「制限」されていた絶対君主同士の戦争
  • 兵士の逃亡──指揮官が最も怖れたこと
  • 戦争を好み、戦闘を毛嫌いした君主たち
  • 制限戦争時代のプロイセン
  • 「戦闘なき戦争」が可能だった時代
  • 大元帥にして戦場の指揮官、同時に参謀総長
  • フリードリッヒ大王を常勝者たらしめた〝陰の男〟
  • フランス革命が無制限の戦争を復活させた
  • 安上がりで士気の高い国民軍の登場
  • なぜ、ナポレオンの軍隊は強かったのか
  • 天才的リーダーゆえの落とし穴
  • 「大規模」という魔性
第2章 かくて「頭脳集団」は誕生した ──ナポレオンを挫折させたプロイセン参謀本部の実力
  • プロイセン軍の動脈硬化
  • 「最高戦争会議」の創設
  • どん底に落とされたプロイセン
  • プロイセン参謀本部の父・シャルンホルストの登場
  • 改革の眼目は教育にあり
  • マッセンバッハ・プラン
  • 頼みの綱は、ただ一人
  • 献策は容れられず
  • 難航する軍制改革
  • 「軍事省」の設置
  • シャルンホルストの微妙な立場
  • 反仏派の巻き返しと新軍制成立
  • ナポレオン恐怖症の克服とシャルンホルストの死
  • シャルンホルストの忠実なる後継
  • 〝退きつ攻めつ〟の徹底的消耗戦
  • いざ決戦、ライプツィヒへ
  • 七年越しの仇
  • 十四戦十一勝の敗者
  • 天才・ナポレオンが見落としたもの
  • 作戦的退却軍と敗残兵の大いなる違い
  • 常勝の英雄の辞書に、敗戦後の計画はなかった
  • グナイゼナウの功績と失意
第3章 哲学こそが、勝敗を決める ──世界史を変えたクラウゼヴィッツの天才的洞察
  • 改革思想の余燼⑴──ボイエン
  • ボイエンの理想と相反する現実
  • 改革思想の余燼⑵──グロルマン
  • 軍縮時代のヨーロッパで突出した軍費
  • 参謀本部の独立
  • 軍事省、参謀本部、軍事内局──拮抗する三つの勢力
  • 二つの戦争理論と国家の運命
  • クラウゼヴィッツの〝野心〟
  • 「戦争は政治である」
  • 名著は遅れて世に広まる
  • プロテスタントの風土からのみ発生しうる思想
  • 過渡期の参謀本部
第4章 名参謀・モルトケの時代 ──「無敵ドイツ」を創りあげた男の秘密とは何か
  • 騎士的心情の国王・ヴィルヘルム一世の登場
  • 文学的素養と文学者的外見を持った軍人
  • トルコ軍に招聘される
  • 侍従武官から参謀総長へ
  • 鉄道は国家なり
  • デンマーク戦争の勝利とモルトケの発言権拡大
  • 普墺戦争での妙手
  • ケーニッヒグレーツの戦い──史上最大の包囲作戦
  • 武器革新にみるプロイセン参謀本部の勤勉
  • 偉大な政治家と偉大な軍人の差
  • 勝って兜の緒を締める──普墺戦争の徹底反省
  • 対仏戦への入念なる準備と絶対の自信
  • 現場の指揮官の独断を不問に付す
  • 再び「外交の人」対「軍事の人」の対立
  • モルトケの誤算
  • 輝かしき栄光の中に翳りの徴候
  • 組織の肥大化、構成の複雑化
  • 〝創業者利得〟は永遠にあらず
  • 二人の巨人が予言するドイツの運命
  • 「神のごとき者」の後継者たち
第5章 「ドイツの悲劇」は、なぜ起きたか ──ドイツ参謀本部が内包した〝唯一の欠点〟
  • リーダーなきスタッフの悲劇
  • シュリーフェン・プラン
  • 小モルトケが参謀総長に任命された理由
  • 骨抜きにされたシュリーフェン・プラン
  • 「ドイツにもロイド・ジョージが欲しい」
  • 強力なリーダーの出現への渇望
  • ヒトラーと参謀本部
  • ドイツ参謀本部の最期
  • 「リーダー」と「スタッフ」のバランスにこそ
おわりに──なぜ、新版か
  • 付録1「専門家の仕事を見かねる素人の立場について」
  • 付録2「強弁の人・秦郁彦氏に答える」
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