
松下幸之助 珠玉の伝記
松下幸之助は「不倒の人」である。何度も日本を襲った不況にも倒れず、絶えず発展し続けた人である。しかも、敗戦・公職追放という大厄災でも倒れなかった。そして、世界が認めた「哲人」(フイロソフアー)としての思想。日本には世界的な思想家がいないとされるが、松下幸之助のPHPこそ日本の「哲学者」であると思う。パナソニック、そして日本の再建のカギは、松下幸之助の哲学にある!
著者プロフィール
渡部 昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英文学者。文明批評家。1930年、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr.Phil.,Dr.Phil.h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に『英文法史』などの専門書、『文科の時代』『知的生活の方法』『知的余生の方法』『アメリカが畏怖した日本』『「修養」のすすめ』『「日本の歴史」①〜⑦』『読む年表 日本の歴史』などの話題作やベストセラー多数がある。
目次
まえがき- 松下さんと秀吉の出自
- 山紫水明は人物を育てる
- 逆境の前に順境あり
- 日本の実力主義
- 時代は二度あった
- 実力主義の時代には商業が栄える
- 徳川家康は実力社会を否定
- 村の長たる資格
- 徳川家は長男を重視した
- 無能将軍でも世の中はよくなる
- 村の衆と町の衆
- わが農耕的発想の残滓
- 〝改革〟が江戸文化を潰した
- 明治は騎馬型発想の時代
- 『西国立志編』が殖産振興を可能にした
- 松下家には騎馬型発想の素質がある
- 将棋は頭の体操
- 身近にいた立志伝中の人
- 最初の奉公は火鉢屋だった
- 高くついた饅頭
- 時流に乗った自転車屋に奉公する
- 神経がこまやかだった
- 講談はすぐれた教科書
- 漢字仮名交じり書きほど高能率なものはない
- サラリーマンなら課長どまり
- 悪い夫がよい父である場合
- いまの子供に百万円を扱わせよ
- あまりに日本的な発想
- 騎馬型発想なら妙案が出た
- 十三歳で百万円の商い
- 一歩先んじる
- 金銭には潔癖であれ
- 商売には自浄作用が必要だ
- 電気に賭ける
- 電気と商業は怪しげなもの
- 〝負〟を知れば努力目標が明確になる
- 武士と足軽の差
- 内気な青年こそ大物になれる
- 〝見る〟ことは実現への第一歩
- 留学の最大の収穫
- 「おれは運の強い男だ」と思い込む
- 学校嫌いも意を安んじて可なり
- 先祖の祀りを意識する結婚
- いま離婚と同棲は増えている
- 墓を建てる発想
- 決めておけ、そう悪くないぞ
- 昔の結婚は野蛮だったか
- 奥さんがしっかりしていれば資料は残る
- 行儀見習いはすぐれた教育
- 女中より女工のほうが気の毒
- 二人の口なら食える
- 共働きは生活を貧しくする
- 肺結核と徴兵は二大恐怖だった
- 鈍感では大リーダーになれない
- 鄙事に多能なり
- 脱サラへの引き金
- ソケットのために会社をやめる
- ヒーローには〝むちゃ〟の要素がある
- 資本金二百円で十円の売り上げ
- 〝内なる声〟で未来を予知した
- 年の瀬の天佑
- モルトケと共通する発想
- 頑張れ、しかし固執はするな
- ついに独創商品が売れた
- 全従業員に企業秘密を公開した器量
- 東京は売りにくいからこそ、成功しやすい
- 松下的発想なら貿易摩擦はなくなる
- 巧みな攻めと守りの使いわけ
- 環境の変化は確実な不老術である
- シャッポが要る人、シャッポになれる人
- 得したり損したりしながらの成功はあり得ない
- 商売の基本は富を軽視しないことだ
- カンと自己暗示は成功率を高める
- 小姓制度は早期幹部教育だった
- うちの工場には電話があるんやで
- 大胆と慎重はバランスが大切
- キーソケットの製造は時至るまで待とう
- 自転車用電池ランプは売れるはず
- 〝富山の薬売り方式〟の勝利
- 潔さがなければ事業家ではない
- 精神的ボルテージが高ければ涙が流れる
- たった一人の便所掃除
- 発明・販売の両輪を円滑に動かし続ける
- 他所の御意見番を引っ張ってきた
- のんびり問答はやすらぎを与える
- 宗教家は精神分析医である
- 長生きできる確信が持てた
- 文句が多い男だからこそ使える
- 人材のために工場を抱える
- 短期的な攻めで勝つ
- 選挙はおもろいもんや
- 泣いて支払った一万円の価値
- よい結果は心の支えとし、悪い結果は忘れてしまう
- 〝ナショナル〟は新聞記事がヒント
- 乾電池一万個をタダでください
- 戦国武将の駆け引きを思わせる
- ライバルからアドバイスを得る
- 二人三脚の歩幅が合わない
- 店員となった共同経営者
- 取引なしで二万円貸してくれるか
- 強運だった住友銀行との取引
- 口約束が守られるのは民度が高い証拠である
- 悲しみを乗りこえて学んだもの
- 借金は極力世間に知らせるな
- 松下さんの深慮遠謀
- 生産は半減しても従業員は解雇しない
- 松下方式はアメリカで注目されている
- 従業員尊重は偉大な社会的発明である
- 不景気だからこそ高級乗用車を買おう
- 〝松下太閤〟の真骨頂
- 成長の決め手は不断の技術革新にある
- 立志伝中の人が嫌がる学卒者を積極的に採用
- 高級技術のラジオ分野に進出して躓く
- 故障のないラジオで躓きを取り返す
- 技術者と経営者の差が教えるもの
- 私は百万円欲しい……
- 演説をぶって代理店を動かす
- 松下電器は人をつくっている会社です
- 宗教への誘いを受ける
- 宗教は経営である
- 天理教の〝経営〟にライバル意識を持った
- 実業は聖なる仕事だ
- 事業は〝水道の水〟のごとくあるべきだ
- ルルドの奇跡には大きな事実がある
- 労働は悟りであり宗教行為である
- 松下電器ほど日本的な経営はない
- 第一回創業記念日には経営神学が吐露された
- 〝松下教〟の使命到達期間は二百五十年
- お釈迦様の向こうを張った命知第一年の宣言
- 感激の極みに達し、壇上に飛び上がる
- 松下の社歌はパブリックスクールの雰囲気
- デモンストレーションの効用を熟知していた
- 徹底的に面白い運動会をやろう
- 松下政経塾の濫觴ここにあり
- 松下流の発想はアメリカの事業部制に近い
- 松下電器の五精神と五箇条の御誓文
- 軍需生産に携わる
- 労働組合結成式に社長が出席
- 労働組合が社長追放解除運動を起こす
- 「道なきときに栄えるのは恥」である
- 〝物品税滞納王〟としてマスコミに登場
- 行動して理解したPHP活動
- 初渡米、見るもの聞くもの驚かざるはなし
- 繁栄主義について自信を深める
- 決断すべきときに決断したフィリップス社との提携
- 経営指導料とは卓抜な対抗手段だ
- 経営は芸術である
- 経営のコツを聞きたければ、カネを払いなさい
- 苦労をすれば国際感覚が磨かれる
- 大風呂敷の五カ年計画を四年で達成
- 国際競争に勝つためには週休二日制が必要
- 『タイム』のカバーストーリーに登場
- ミコヤンを食ったジョークの冴え
- マルクスを読まなければ共産主義が分かる
- 『ライフ』がとらえた松下さんの五つの長所
- マスコミが競って求める書き手
- 〝熱海会談〟のドラマチックな乗り切り方
- 青春とは心の若さである
- 過密地が偏ると日本が傾く
- ついに秀吉を乗り越えた
- 注目された『崩れゆく日本をどう救うか』
- 卓見! 『新国土創成論』と「無税国家論」
- 無税国家は可能だ
- 弁護士の多い国は先進国ではない
- いま松下さんに望みたいことは
- これからも〝不倒翁〟である