孫子の兵法

渡部昇一著作集/対話②

渡部昇一(上智大学名誉教授)/谷沢永一(関西大学名誉教授) 著
定 価:
本体1600円+税
判 型:
四六判上製
ページ数:
292ページ
ISBN:
9784898314111
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人生の競争に勝つための方法!

『孫子』は昔も今も、東洋にも西洋にも、国家にも会社にも個人にも通ずる真理を含んでいる「生きている本」である。「正直なだけでは生き抜けない」「戦いは軽々しく始めるべきではない」「目的のためには金を惜しまない」「勝負はスピードが肝心」「他人をあてにするのは愚か」「情報のキーマンを育成せよ」など、人生の場面での根本の原理原則が書かれており、国民すべてが『孫子』のエッセンスを身につけることが、日本国全体にとっても重要である。政治家、ビジネスマン必読の書!

著者プロフィール

渡部 昇一(わたなべ・しょういち)
上智大学名誉教授。英文学者。文明批評家。1930年、山形県鶴岡市生まれ。上智大学大学院修士課程修了後、独ミュンスター大学、英オクスフォード大学に留学。Dr.Phil.,Dr.Phil.h.c.(英語学)。第24回エッセイストクラブ賞、第1回正論大賞受賞。著書に『英文法史』などの専門書、『文科の時代』『知的生活の方法』『知的余生の方法』『アメリカが畏怖した日本』『「修養」のすすめ』『「日本の歴史」①〜⑦』『読む年表 日本の歴史』などの話題作やベストセラー多数がある。

谷沢 永一(たにざわ・えいいち)
関西大学名誉教授。1929年、大阪市生まれ。関西大学大学院博士課程修了。専門は日本近代文学、書誌学。社会評論にも幅広く活躍。サントリー学藝賞、大阪文化賞、『文豪たちの大喧嘩─外・逍遙・樗牛』で読売文学賞受賞。著書に『完本・紙つぶて』『百言百話』『回想 開高健』『人間通』『歴史通』など多数がある。2011年3月逝去。

目次

〈プロローグ〉『孫子』の醍醐味とは
  • 人生とは競争によって成り立っている──谷沢
  • 心に響いた「兵は拙速を聞く」──渡部
  • 確立されていた将軍の権威──谷沢
  • 実際に成功に繫がる教え──渡部
  • 戦争は危機を脱する手段──谷沢
  • 現代の経営者、政治家に読ませたい本──渡部
一、計 篇──戦う前になすべきこと、心がけるべきこと── 戦いは軽々しく始めるべきでない 【兵は国の大事(計 一)】
  • 準備なしに始めた大東亜戦争──谷沢
  • 慎重だった明治のリーダーたち──渡部
  • 日露戦争はなぜ勝てたのか──谷沢
  • 前大戦の失敗の本質を見極める──渡部
  • 理不尽な行為には断固怒れ!──谷沢
  • 早くから旗印を掲げた信長──谷沢
  • 石油を止められた日本人の立場──渡部
正直なだけでは生き抜けない 【兵は詭道なり(計 三)】
  • 騙すことこそ人生の大道──谷沢
  • 世界では詭道と詐術に境界がない──渡部
  • 能力は誇示しすぎず、隠しすぎず──谷沢
  • 無能を装った大石内蔵助──渡部
  • 信長は『孫子』を読んでいた──渡部
冷静な算盤で考える 【廟 算(計 四)】
  • 大事なことを計算しなかった艦隊派──渡部
  • 東郷平八郎は無謬の将軍ではない──谷沢
  • 本当の計算のできる人ほど疎外される──渡部
二、作戦篇──最小の犠牲で最大の効果をあげる策の基本── 目的のためには金を惜しまない 【日に千金を費して、十万の師挙がる(作戦 一)】
  • 軍艦を惜しんだ海軍軍人──渡部
  • 軍艦の目的を見失った海軍──谷沢
すべての勝負はスピードが肝心 【兵は拙速を聞く(作戦 二)】
  • 時間をかける戦争、かけない戦争──谷沢
  • シナ事変が長引いたのは痛恨の極み──渡部
  • 日本陸軍には自動制御が欠落していた──谷沢
  • 過失の責任をとらない大蔵省──渡部
三、謀攻篇──戦わずに勝つための手段── むやみな戦いをせず勝つ法則 【戦わずして人の兵を屈す(謀攻 一)】
  • 共産圏は『孫子』に学んでいる──渡部
  • 共産革命は敵の崩壊を座して待つ──谷沢
城攻めをしてはならない 【攻城の法(謀攻 二)】
  • 優れた武将は勝って得るものを考える──谷沢
  • 城攻めに手を焼いた武将たち──渡部
敵を知り、己を知れば負けることはない 【勝を知るの道(謀攻 六)】
  • 日本はアメリカを知らずに戦った──渡部
  • 世界を探る努力を放棄した日本陸軍──谷沢
  • 「フロンティア・スピリット」という言葉を知らなかった日本人──渡部
四、形 篇──戦いのすがた── 優れた人物は目立たないところにいる 【不敗の地に立ちて、敵の敗を失わざる(形 二)】
  • 目につきやすい功績は、真の功績にあらず──谷沢
  • 表れない名将の名──渡部
勢いに乗ることが勝利の鉄則 【積水を千仞の谿に決するがごとき(形 四)】
  • ヒトラーは『孫子』を読んでいなかった──渡部
  • 四千の兵が一万五千の兵を破った鳥羽・伏見の戦い──谷沢
五、勢 篇──「形」を「動」に転ずること── 節目は瞬時に行なう 【激水の疾くして石を漂わす(勢 三)】
  • 「激水」の疾さを感じる真珠湾攻撃──渡部
敵を誘き出して撃つ 【善く敵を動かす者は(勢 五)】
  • 秀吉の誘導にはまった勝家──谷沢
  • チャーチルの誤算は、日本が想像以上に強かったこと──渡部
六、虚実篇──「実」で相手の「虚」を衝く── 目に見えない、無形の力を持つ強さ 【兵を形するの極は、無形に至る(虚実 六)】
  • 見えてこないユダヤ人財閥の力──渡部
  • 目に見えない力の効果──谷沢
  • 日本を世界の財閥が住める国に──渡部
  • 二重スパイ、大いに結構──谷沢
変化に対応できる柔軟性とは 【兵の形は水に象る(虚実 七)】
  • 天下を開いた秀吉の強運──谷沢
七、軍争篇──戦闘の心得── 戦うための基本は物資の調達である 【輜重無ければ則ち亡び(軍争 二)】
  • 輜重を軽く見た日本──渡部
  • 懐疑的な発言は封じる日本陸軍の体質──谷沢
人目につかないところで迅速に動く 【其の疾きこと風のごとく(軍争 三)】
  • 『孫子』に見る絶妙の比喩──渡部
  • 文化を運んだ舌耕の徒──谷沢
八、九変篇──逆説的発想の戦い方── 無理、無駄な争いはしない 【命を君に受け、軍を合わせ衆を聚むれば(九変 一)】
  • 命令を握り潰した叩き上げの隊長──渡部
  • 士官学校上がりをバカにしていた古参兵──谷沢
他人をあてにするのは愚かなり 【吾が以て待つ有るを恃むなり(九変 四)】
  • ヒトラーの援軍をあてにしていた日本軍──渡部
  • 希望的観測で物事を判断するな──谷沢
九、行軍篇──布陣法および敵情察知法── 生きるか死ぬかのときの判断 【半ば済らしめて之を撃たば(行軍 一)】
  • 「宋襄の仁」にはなるな──渡部
  • 「ええかっこしい」ではいけない──谷沢
素人の意見を無視しない 【鳥起つは、伏なり(行軍 四)】
  • 観察力をいかに養うか──渡部
  • いまの不況を招いたもの──谷沢
十、地形篇──地形に応じた戦い方── 部下をいたわりながらも、命令できるか 【卒を視ること嬰児のごとし(地形 四)】
  • 家庭内暴力はなぜ起こるか──渡部
  • 親や教師は命令権を確立せよ──谷沢
敵を知らなければ、己の立場も分からない 【彼を知り己を知れば(地形 五)】
  • 国民の不信に気づかなかった社会党──谷沢
  • アメリカに「人民」はいない──渡部
  • 建前を知って本音を知らず──谷沢
  • 日本はなぜアメリカを理解できないか──渡部
  • 日本人は外国を知らなければならない──渡部
十一、九地篇──状況に応じた戦い方── 敵を内部から混乱、分裂させる法 【利に合いて動き(九地 二)】
  • 日本軍と日本人の分断を図るインテリたち──渡部
  • ファシズムの担い手とは──谷沢
相手がもっとも大切にしているものは何か 【兵の情は速やかなるを主とす(九地 三)】
  • 日本の痛いところをついたアメリカ──渡部
  • 最愛のものを奪う──谷沢
迷信は禁じなければならない 【祥を禁じ疑を去れば(九地 四)】
  • 将軍が神頼みだと危ない──渡部
  • 神仏についての建前と本音──谷沢
危機に直面すれば団結する 【呉人と越人とは相悪むも(九地 五)】
  • 第二次世界大戦に見る呉越同舟──谷沢
  • プロパガンダを鵜呑みにする学者たち──渡部
将たる者は、秘密主義でゆく 【能く士卒の耳目を愚にして(九地 六)】
  • 将たる者の胸の内──渡部
  • 信頼が不安を払拭する──谷沢
相手の考えをどう推察するか 【諸侯の謀を知らざれば(九地 八)】
  • 心ある外交官の言葉を無視した日本──渡部
  • 相手の立地条件を知る──谷沢
報酬はたっぷり与えよ 【無法の賞を施し(九地 八)】
  • 戦後の平等主義は活力を低下させる──渡部
  • 能力主義の時代には破格の扱いを──谷沢
始めは処女のごとく、後は脱兎のごとく 【始めは処女のごとくして(九地 九)】
  • 本当の脱兎はニミッツだった──渡部
  • しずしず攻めて素早く落とす──谷沢
十二、火攻篇──火攻めの原則と方法── もっとも効果的な攻撃法とは 【火攻に五有り(火攻 一)】
  • アメリカは早くから日本の火攻を考えていた──渡部
  • B29の火攻め──谷沢
勝負にこだわり本来の目的を見失うな 【火を以て攻を佐くる者は明なり(火攻 三)】
  • 費留は高くつく──渡部
一時の感情で行動を起こすな 【主は怒りを以て師を興すべからず(火攻 四)】
  • 怒りが日本を滅ぼした──渡部
  • 面子問題の怒り──谷沢
  • 怒らなかった明治維新の日本人──渡部
  • 冷めた怒りが維新を可能にした──谷沢
十三、用間篇──情報活動── 情報収集に費用を惜しんではならない 【人に取りて、敵の情を知る(用間 一)】
  • 日本は情報収集を冷遇した──渡部
  • スパイは厚く遇するほど効果がある──谷沢
情報のキーマンを育成せよ 【間を用うるに五有り(用間 二、三)】
  • スパイを使いこなせなくなった日本──渡部
  • プライベートが持つ力──渡部
プライベートな情報網を持てるか 【反間は厚くせざるべからざるなり(用間 四、五)】
  • 生かさなければならない財閥の情報網──渡部
〈エピローグ〉
  • 「宋襄の仁」にはなるな──渡部  284
  • 古典は試金石──谷沢  286
あとがき
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