昨年末に放送された『ガリレオX 読書の小宇宙 本と人とのこれからの関係』を制作していく過程で調べた幾つもの事例から、敏腕ディレクターが教えてくれたことで、とても印象に残った話があります。
アメリカの大学で行われた実験で、同じ大学の学生を二つのグループに分け、同じ物語を片方は紙の本で、もう片方は電子書籍で、それぞれ読んだのちにバラバラにされたストーリーを再構成して組み立てるというもの。
紙の本で読んだグループは再構成出来たそうですが、電子書籍のグループはうまく再構成出来なかったとそうです。
これには幾つか考えられることがあるそうですが、中でも紙の本だと五感で記憶していることが挙げられます。たとえば、読んだ本の中から必要な部分を、なんとなくあの辺にあったようだと目星をつけて頁を捲ったことはありませんか?
もう一つ、実証はされていないそうですが、電子媒体の場合は文字を認識するのに読み込むのではなく、全体を絵的に捉えることで記憶するというものです。
これは映像などと一緒で、強烈な印象をうけた部分は記憶に残りやすいそうですが、その反面、脳の情報解析処理が追いつかず、その他の部分は記憶に残らないというもの。
視覚から入る情報は膨大なため脳が処理する容量を軽くオーバーしてしまい、運転する車の中から風景を見てはいても、その一部始終を記憶はしていないことなどが、例として挙げられるそうです。
もし全体を記憶しようとすると、膨大な情報量により脳への負担が大きくなり、運転に集中出来ず事故を起こしてしまうかもしれません。
紙の本と電子書籍の違いで一番印象深かったのは、紙で読んでいる時は脳波がリラックスした状態となり、いわゆる寝落ちと呼ばれることが起きたりするそうですが、電子書籍では脳波が常に興奮状態になっているということで、就寝前の読書にあまり向いてはいないようです。これはゲームなど電子機器を就寝前に使用すると寝つきが悪くなると言われていることからも、とても腑に落ちる話でした。
某社の文庫の宣伝キャッチに「本は心のビタミン」というものがありましたが、せっかく読んだ本でも、電子書籍だと記憶に残るのは強烈な部分だけでは味気ないものです。
紙の本でゆっくりと読んで、心に刻み込める、そんな読書がアナログな自分には最適なようです。