本を読むということ(前編)



多くの学校が夏休みとなり、本を読んで感想文を書く、などという本が嫌いになりそうな宿題の季節でもあります。
今回は本を読むということについて、つらつらと書いてみます。

ここ数年で刊行された数ある海外文学の中でも、最高傑作ではないかと個人的に思っている『アウシュヴィッツの図書係』(アントニオ・G・イトゥルベ著)。この中の一節に「本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ」とあります。
本を読まない人がものを考えないとは思いませんが、物事の本質を鋭く見抜く人や、何かを表現する人、他人に何かを伝えたりすることが上手な人ほど、読書家だったりするものです。
教科書だろうと、小説だろうと、漫画だろうと、自己啓発ビジネス書だろうと、宗教書だろうと、ノンフィクションだろうと、とにかく本というものが人に与える影響は少なからずあると思います。
そうは言っても、本を読むことが嫌いだとか苦手だという以前に、そもそも本に興味の無い人はたくさんいます。
出版業界ではあの手この手で、読書人口を増やそうと躍起になっております。学校教育の中での朝の読書活動を始めとして、書店さんが独自に行っている子どもたちへの本の読み聞かせや、読んだ本をプレゼンして勝者を決めるビブリオバトルなど、様々な取り組みがあります。
最近はお祖父ちゃんお祖母ちゃん世代が、お孫さんへと本を買われることが多いようで、児童書全体が活況を呈しております。この世代は出版が元気だったころに、今のようなスマホでゲームや、はたまたSNSで時間を消費するのではなく、多感な青春時代に本を読んで過ごしたからか、本を読むことにさほど抵抗がないのかもしれません。
なによりも大切なことは、幼いころから本に親しむ環境だと思います。
とはいえ本を読むのが苦手な人の気持ちは、本を読むことが呼吸をするのと同じような人にとっては想像をすることが難しいかもしれません。
それでも本を読む楽しさを少しでも多くの人たちに知ってもらいたいと、弊社でもテレビ番組を制作(中編にて詳述)しました。

炎天下の営業外回り


日本各地で猛暑を揮う高気圧のせいで、連日35℃超に天気予報の日本地図も真っ赤になっています。
皆さまも水分&塩分補給をしっかりして、熱中症対策を万全になさってください。

営業は新刊や既刊の売行良好書を、お店の目立つところに並べてもらうべく、雨の日も晴れの日も、ほぼ毎日のように各地の書店さんを訪問しております。
今年の夏は例年以上に酷暑な毎日で、街行く人たちも顔を真っ赤にしながら炎天下の中を歩いておられます。
これだけ暑いと、伺った先の担当者さんも申し訳なさそうに「暑い中をありがとうございます」と恐縮されるものですから、ここぞとばかりに新刊をアピールしちゃいます。

問題は、あまりの暑さにクーラーの効いた店内から出るのが億劫になり、棚のチェックと自分に言い訳をして、しばし新書が並ぶ棚以外も念入りに眺めてしまい、気がつけば欲しかった本をここぞとばかりに買い込んだりしています。
その結果、暑さだけでなく、鞄に仕舞いこんだ本の重さも加わり、次のお店に向かう足取りが更に重くなるという、なんとも本末転倒なことをしでかすのも、すべて暑さのせいだとしておきましょう。

それでは、本日も最高気温36度予想の地へ向かいます。

宣伝ポスター


 

大雨の影響で朝から電車が駄々遅れとなり、千代田線から代々木上原乗り換えの小田急線のホームで、なかなか来ない電車を待っていたら、なんと人気赤丸急上昇中の吉岡里帆さんが、なんとも意味ありげな表情でこちらを見つめているじゃあ、あ~りませんかっ!
出版業界の夏の風物詩である、夏休みに読書を推奨する各社の文庫で、本屋さんの店頭の目立つ場所が埋め尽くされる、その中の一つナツイチのポスター。
彼女と見つめあう(眺める?)こと10数分。同業としては、このような宣伝ポスターを掲示してみたいなぁ、などと思っていたら、ようやく藤沢行きの快速急行電車が来たので移動再開。
弊社の読者に向けてのポスターであれば、起用するタレントさんで相応しい人は誰だろう?
この快速急行、停車駅に止まるたびに行先を変更して、最後には各駅停車となってしまい、目的地の次の駅が終点という、危うく現地へ行けなくなるところだった電車の中でつらつらと沈思黙考。
思い切り閃いた結果は、近日公開いたします。

我が社のボヤッキー


ボヤキのノムさんこと野村克也元監督は、南海、ヤクルト、阪神、東北楽天と、才能を秘めた選手を起用して名采配を揮い球界を賑わせた名伯楽。
この名伯楽と比較するのはおこがましいのですが、我が社の装丁室にもボヤキながら、しかし仕事は確実に終わらせるボヤッキーがおります。
彼はとても気持ちの良い正義感に溢れた青年で、常日頃から自社の本や雑誌に関する情報を得ては、編集や営業に教えてくれたりするナイスガイです。
単行本や雑誌のDTPを始め、書籍の装丁から営業のPOP、新聞広告のデザインと、およそデザインに関わる業務になくてはならない存在であります。
そんな彼に対して、ボヤかなければもっと良いのにと思っていたのですが、ある時ふと彼の仕事の原動力がボヤキなんじゃないかと、野村元監督から連想した次第であります。
いまはまだ、しがないボヤッキーの彼ですが、ゆくゆくはボヤキの〇〇さんとしてデザイン部門で名采配を揮う日は、そう遠くはないかもしれません。

新聞広告に噛みつく人々



毎月雑誌発売日に全国紙(読売・産経・日経・毎日)に掲載している、広告にご意見をくださる人たちについてご紹介いたします。

弊社では『WiLL』の発売日に毎月必ず新聞広告を出しています。
この広告のキャッチ(見出し)に、なぜか反応してご意見(文句)のお電話をくださる人が後を絶ちません。

ご意見(クレーム)の内容は、その時々の社会情勢を反映しておりまして、3~4年前までは韓国や中国を批判する記事の見出しに、この2~3年は安倍政権へのご意見(批判)が多くなっております。
どちらも共通しているのは、雑誌を買って記事を読んでのご意見ではなく、新聞広告の記事の見出しを読んだだけで、瞬間湯沸かし器的に怒り心頭なお電話ばかり。
普段から電話応対には全社員丁寧をモットーとしている弊社ですが、新聞広告を見ただけのご意見には以下のような受け答えをしています。

営業部(以下営):「はい、ワックでございます」
クレーマー(以下ク):「今朝の新聞を見たんだけど」
営:「はい、何かございますでしょうか?」
ク:「なんでこんな雑誌を売るんだよ」
営:「はい? どのようなご用件でしょう?」
ク:「だ、か、らぁ~、なんでこんな雑誌を売るんだよっ!」
営:「失礼ですが、何をご覧になってのご意見でしょうか?」
ク:「今朝の新聞っていっただろ」
営:「新聞の広告でございますね」
ク:「そうだよ」
営:「新聞の何をご覧ですか?」
ク:「広告だよ」
営:「〇月号をお買い上げ頂いてのご意見でしょうか?」
ク:「買うわけないだろ、こんな雑誌」
営:「お買い上げでない? 弊社はお買い上げいただき本をお読みくださってのご批判は大変貴重ですので、謹んで耳を傾けさせていただきます。是非ともお待ち申し上げますので、これにて失礼いたします」

大抵はこれで終わるのですが、中には腹立ちまぎれに何度も電話をしてくる方もいて、最後は意味不明の叫び声をあげて怒鳴り散らす始末。
新聞広告だけでも、これだけの反応があるものですから、いかに『WiLL』が世間の皆様に注目されているか、編集・営業つねに心して業務に取り組んでいます。

そして驚いたことに、このブログを書いている最中に、リアルにアベノセイダーズの方からご意見のお電話がありました。

アベノセイダーズ(以下ア):「新聞の広告を見たんですけど」
営:「はい。ありがとうございます」
ア:「あなたたちは、何てことしてくれてるんだ。安倍政権を応援ばっかじゃないか。野党と国民の声がまったく届いてないじゃないか」
営:「は? なにか問題でもございますでしょうか?」
ア:「大ありだよ! 安倍政権は犯罪集団だよ。モリカケなんて犯罪だ。この本も犯罪だ」
営:「貴重なご意見ありがとうございます。これまで『WiLL』は司法の場で裁かれたことはございませんし、お陰様で多くの読者様に歓ばれて部数も伸びております。よろしければ、是非とも『WiLL』をお読みいただけましたら幸いに存じます」

昨今、ネットで炎上した企業や役所などの団体へ、直接電話で抗議をする人たちが増えております。企業側では品質向上云々といって電話の内容を録音するところも増えました。

直近では有名アーティストの楽曲にクレームをつけ、謝れだの廃盤にしろだの、挙句の果てはライブ会場前で抗議集会を開催して、その参加者を募るだのと、狂気の沙汰も甚だしい世情であります。

なんだか正義のミカタがアチコチで登場して、なんともヘンテコで嫌な風潮が蔓延してきたものです。